火の雨が降った後
自宅から大通りに出る十字路までは、普段なら5分もかからず着く。


それなのに、今はその何倍もの時間がかかった。


それだけ人がたくさんいたのと、地面に転がる遺体や両脇で燃える炎を避けながら歩くのにすごく時間をとられた。


十字路に出ると、目の前に広がる景色は私の知っている街並みではなくなっていた。


電信柱は倒れ、そこから火が立ちのぼる。


焼夷弾のせいなのか、油の匂いが広がる。周りの家も燃えていて、景色がオレンジ色をしていた。


熱さで額から汗が流れるのを腕で拭う。


すぐ側の民家の前に、バケツがあるのが目に入りかけよった。


防災頭巾をそのバケツの水につけ、かぶりなおした。


きっとこの水も家に燃え移った火を消そうとしてたんだろうな…。


そう思いながら、自分の家ももう燃えてしまったのかなと、胸が痛んだ。
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