火の雨が降った後
あれはいつだったかな…。


まだ結婚する前、まだ日本海軍に接収される前の山下公園。


船を見ていた郡ちゃんが言った。


「ここって、関東大震災の後のガレキでできたって知ってる?」


「知ってるよ!日本で初めての臨海公園でしょ?」


自分の生まれ育った横浜が大好きな私は、そんなことを誇りに思う部分があり、ちょっと得意気な顔をして言った。


ははっと笑った後、郡ちゃんは青く広がる海から右側に顔を向けた。


「その時、山手に住む外国人がすごい活躍したって聞いたことあるんだ」


山手の外国人…?


郡ちゃんの視線をたどるように、私も山手の方を見つめる。


「昔は外国人と日本人が協力し合って横浜を作ってきたのに、何で今は殺し合う時代なんだろうな」


横浜は貿易で栄えたって聞いていた。


実際この町には外国人がたくさんいる。


青い目をした女の子、金色の髪の男の子。違和感もなく町ですれ違うことがある。


「同じ人間なのにね」


そう呟いて郡ちゃんの温かい手を握った。
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