火の雨が降った後
「うん。同じ人間だから、きっと感情も同じなんだと思う」


感情も同じ?


郡ちゃんの顔を見上げると、それに気づいた郡ちゃんがふわっと笑顔を見せた。


「同じように、大切な家族がいて守りたい」


「そっか…」


考えてみたら簡単なことなのに、目から鱗な言葉だった。


鬼畜アメ公なんて言葉があるような時代。そんな相手の環境を考えることなんてしたこともなかった。


郡ちゃんは、色んな視点から物を考えるんだな…。


なんて感心していた。


「いつかさ、外国とまた仲良くなって横浜がもっともっと栄えた町になるといいね」


同じ人間だもん。きっと分かり合える時がくる。


こんな時代だけど、みんな大切な物は同じ。


きっといつかは戦争も終わって仲良くなる時代が来るはず。


青い海と空の境目に向かって小さくなって行く船を見つめながら、そんなことを考えていた。
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