火の雨が降った後
「じきに来るとは思っていたけど…」


郡ちゃんが視線を紙に落として言った。


「これ…って、徴兵…ってことだよね!?」


震える声で群ちゃんに聞く。


赤紙…召集令状…。


郡ちゃんは、徴兵に行かなきゃいけないの…?


真っ白だった頭の中が、赤紙でいっぱいになっていく。赤く塗りつぶされてるような感覚だった。


膝の上で握っていた手が震え始める。


「や、やだよ!!郡ちゃんが徴兵行くなんてやだよ!!」


口にしたらいけない言葉だって分かってる。


だけど、抑え切れない。


「徴兵に行くことは、名誉なことだよ」


郡ちゃんの優しい声に、私は目に涙を溜めて頭を横に振った。


そんなの国が勝手に言ってるだけ。


戦争に行ってしまったら、帰って来る保証なんてどこにもない。


死に行くような物。何でそんなのが名誉なわけ?


ただ、郡ちゃんと一緒に暮らしたい。


今までと同じように側にいてほしい。


そんなことすら許されないの?


頭の中がぐしゃぐしゃになっていって、両手で顔を覆った。
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