三階小児病棟(花子へのラブレター)
手術
朝が来た。
目覚めて、一番最初に思った事は、まー君の事だった。
今日は、まー君の手術の日だった。
手術自体は差ほど難しい物ではないが、問題は幾つかあった。
昨日あれからまー君は、一言も口を利かなかった。
少し気になったので、これといった予定が有る訳無もなかったので、ご機嫌うかがいにでも出かける事にした。
病室に着くと、まー君とお母さんが、売店から調度帰って来た。
普段着の私が珍しかったのだろう。目を丸くしてたちどまった。
ご機嫌はすっかり治っていた。
「花子。何してるの?」
「まー君が泣いて無いか見に来たよ」
「男だから泣かない」
そういいながらあっかんべーをしてみせた。精一杯のまー君の強がりだった。
病室を出てお母さんと少し立ち話をした。
売店で男の患者さんに『元気だな』って声をかけられたら、『元気じゃない。元気なら入院してない』って返事してお母さんは思わず赤面したらしい。
全く5歳にしては口が達者な子供だ!
お母さんもそんな立ち話で少し気をまぎらわしてくれたらしく、笑顔が戻った。
私が帰ろうとすると、まー君が駆け寄って来て手紙を手渡してくれた。
私が読もうとすると、
「今読んじゃダメ!」と
真っ赤な顔したまー君が立っていた。
手紙をそのままハンドバッグに入れると、まー君の目を見て…
「ありがとう。頑張ってね!」と言い握手をして部屋を出た。
15分後予定通り手術が始まった。