マイ・スペース
「で、落ち込んでるわけ?」
軽く言ったつもりだったのに、今にもこぼれそうなくらい目に涙をためて、うん。と彼女は頷いた。
後にも先にも、カエデの涙を見たのはこの日だけだった。
カエデが俺にどうしてほしかったのか分からない。
今まで「別れた」と言って、泣いている女友達はたくさん見てきたし、このようなシュチュエーションも初めてじゃない。
話を聞いてほしいのか、抱いてほしいのか。
ただ、カエデの場合は話を聞いてはいけない気がした。
だから、ゆっくり抱きしめた。
カエデを抱こうとも抱きたいとも思わなかった。
ただ、抱きしめてあげたかった。