マイ・スペース

私も彼も、お互いの卒業後の話を一言もしなかった。

どうして彼が海外に行くのか、私が何を目標にして過ごしていくのかも。



「カエデ」



急に立ち止まり、彼は言った。ん?私が振りかえると、彼は泣いていた。


「泣いてやんの。だっせ」


私がそう言うと、お前だって泣いてるじゃん。と言い返された。

二人で笑いながら泣き、そのまま芝生の上に寝っ転がった。

あたりは真っ暗で、たまに自転車に乗ったオジサンが通るだけ。

その日はちょうど、月が半分くらいしかでていなくて、明るすぎず、暗すぎない夜だった。

「楽しかった。今まで」

「俺も。カエデが変な奴だから飽きなかった」

「何それ。失礼ね」

「だけど、本当にいろんなものを見てきたな、俺達。

バカバカしいことやったり、本気で日本の将来を考えて、なぜか国会議事堂まで行ったこととか」

「そんなこともあったね。動物の中で一番なにが臭いかって言って、動物園にわざわざ行ったね」


話しだすとキリがなかった。

途中でケンカしたことも、二人して迷子になったことも…どれも今でもハッキリと思い出すことができる。

それは彼も同じだった。




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