【花集】恋の打ち上げ花火
「マキ、キョウハタノシカッタ。オベントウ、アリガト。ヒザマクラ、アリガト」

「あ、わたしも凄く楽しかったです。きっと、タクとソウも」


――ヒュュゥ~、パ、パン


一本目の花火が上がった。

わたし達の目の前に、鮮やかな大輪が花開く。

(わたしの恋も、花開いたなぁ~)

月人くんにフラレタ時も、こんな寂しい気持ちにはならなかった。

だって、わたしは諦め上手。いつだって、なんだって諦めてきたから。

その代わり得られる平安だってある。そう思ってきたから。

順ちゃんと月人くん、二人の幸せそうな姿を見てたら、わたしの淡い恋心なんてクシャッと丸めて捨てちゃった。

でもね、今日はなんだか、ちょっと違う。

ジウさんは、まだ会って間もない人だけど、なんだかとってもわたしの近くにいて、凄く優しい気持ちにしてくれる。

す、すきだなぁ~って思ったんだ。

やっと花開いたこの想い。でも、今日で終っちゃう。

ジウさんは、片桐さんに言われて、わたしとこの遊園地に来てくれただけだもの。

デートリポートのために、恋人みたいなフリをしてくれただけだもの。

そ、そんなの、わたしだって、ちゃんとわかってる。

わかってる、けど……
< 29 / 31 >

この作品をシェア

pagetop