RUN&GUN
第五章
西の市の小物街に入った途端、与一は異変に気づいた。
与力が多い。
下駄屋に近づくほど、人が多くなる。
胸騒ぎを覚え、与一は人を掻き分けて、下駄屋に走った。
下駄屋の前にできた人だかりを抜けると、店先にできた血溜まりが目に入った。
「怖いねぇ。辰巳の腕を妬む輩の仕業かい」
「そんなことで狙われちゃ、腕が良くても良いこたないねぇ」
囁かれる野次馬の声に混じって、裏事情を知っている者の声も聞こえる。
「いやぁ、大方痴情のもつれってやつだろ」
「そうさな。辰巳も、お盛んだったしな」
与一は耳をそばだてた。
野次馬たちの話からして、辰巳がこの血溜まりに関係しているのは、間違いないようだ。
店の中に目を走らせたが、辰巳はもちろん、店の者の姿もない。
奥が何やら騒がしいようだが、今この場で飛び込むわけにもいかない。
与一は下駄屋の周辺に視線をやった。
その与一の目が、隣の茶屋の店先に置かれたままのものを捕らえる。
皿に一つだけ残った、稲荷寿司。
---藍さん!---
与一は素早く辺りを見渡した。
もちろん目に映る範囲に、藍の姿はない。
小さく舌打ちし、与一は人混みに押されるように、下駄屋の裏手に回った。
与力が多い。
下駄屋に近づくほど、人が多くなる。
胸騒ぎを覚え、与一は人を掻き分けて、下駄屋に走った。
下駄屋の前にできた人だかりを抜けると、店先にできた血溜まりが目に入った。
「怖いねぇ。辰巳の腕を妬む輩の仕業かい」
「そんなことで狙われちゃ、腕が良くても良いこたないねぇ」
囁かれる野次馬の声に混じって、裏事情を知っている者の声も聞こえる。
「いやぁ、大方痴情のもつれってやつだろ」
「そうさな。辰巳も、お盛んだったしな」
与一は耳をそばだてた。
野次馬たちの話からして、辰巳がこの血溜まりに関係しているのは、間違いないようだ。
店の中に目を走らせたが、辰巳はもちろん、店の者の姿もない。
奥が何やら騒がしいようだが、今この場で飛び込むわけにもいかない。
与一は下駄屋の周辺に視線をやった。
その与一の目が、隣の茶屋の店先に置かれたままのものを捕らえる。
皿に一つだけ残った、稲荷寿司。
---藍さん!---
与一は素早く辺りを見渡した。
もちろん目に映る範囲に、藍の姿はない。
小さく舌打ちし、与一は人混みに押されるように、下駄屋の裏手に回った。