RUN&GUN
「一体どうしたんです。藍さんが、稲荷を残して立ち去るなんて」

夕暮れ、色町の外れの住処で、与一は布団にくるまる藍に向かって言った。

「藍さんっ」

勢い良く布団を剥ぎ取ると、小袖姿の藍が、にゃあ、と猫のように鳴いた。

「うもぅ~。お稲荷さんを残しちゃった上に、全速力で走ったから、疲れちゃってんのよ~」

ずるずると布団の上を這い、与一の着物の裾を掴むと、そのまま足にまとわりつく。

「よいっちゃぁん。怖かったのよぅ~」

「何があったんです」

与一は藍を引き剥がしながら、布団の上に腰を下ろす。
藍が、ばしばしと胡座をかいた与一の膝を叩いた。
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