RUN&GUN
「あぁん、もう。胡座かいちゃ嫌」

言いながら、ぐいぐいと与一の足を引っ張って伸ばす。

「胡座かいてちゃ、乗れないじゃない」

「・・・・・・藍さんに乗られないために、胡座をかくんですがね」

胡乱な目で言う与一に、べぇっと舌を出し、藍は伸ばした与一の足の上に、いそいそと乗っかった。

「あたしは別に、胡座の上に乗ってもいいのよぅ? よいっちゃんが痛いだろうから、わざわざ足、伸ばしてあげてるんじゃない」

「その前に、俺の足の上に乗る意味がわかりません」

冷静な与一をじろりと睨み、勢い良く与一に抱きつくと、藍は小さな身体を震わせて言った。

「だってぇ、あたしが狙われそうになったんだもん。よいっちゃんもいなかったし、あたし一人で怖かったんだから~」

危うく押し倒されそうになるのを両手をついて耐えながら、与一はぎょっとした。

「ら、藍さん。本当ですかっ」

顔を覗き込む与一に、藍はふふっと笑って、与一に顔を近づけた。

「なんてね。あそこでお昼食べてたら、いきなり殺気を感じてね。下駄屋のほうを見たら、辰巳の前にいた客が倒れてたのよ。しばらくそのまま様子を見てたんだけどね、そのときに、視線を感じてさ。やばそうな感じがしたから、とりあえず辰巳のほうは置いといて、その場を離れることを優先したの。まくだけだったら、得意だもの。西の市中を、走り回ってやったわ」

ふふんと得意そうに笑う藍に、与一はほっと息をつく。

「よいっちゃん。心配してくれてたの?」

藍が、いつものように小首を傾げて、可愛く与一を見る。
可愛いとは思うのだが、与一にとっては、それだけだ。
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