RUN&GUN
「だから、確かに現場からは、奴から目を離した奴はいないんですって」

「なら、何故このようなことが起こるのだ」

二人の与力の会話が飛び込んでくる。
現場にいた与力のほうは、ほとほと困り切っているようだ。

「何があったんで?」

与一がそっと、隣にいた野次馬の一人に聞いた。

「ああ、何でも護送中に、忽然と犯人が消えて、気がついたらそこの川で土左衛門だったって話だ」

怪訝な顔をした与一に、男は顎で筵を指した。

「今日西の市で、職人を襲った事件の犯人だ。何で職人なんか襲ったんだか知らねぇが、情けないことに、返り討ちにあったって話だぜ。職人にも、一太刀は浴びせたようだがな。何でも、腹ぁぱっくり斬られて、あえなくお縄よ」

「腹を斬られた?」

少し驚いた与一に、何故か自慢げに、男は何度も頷きながら話を続けた。
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