RUN&GUN
「下駄屋の職人って話だから、刃物ぐらい傍にあるだろうよ。そいつでこう、ぶすっとな」

「店先で刃物沙汰たぁ、物騒な職人だねぇ」

「元々職人なんざ、気の荒い連中さね。職人に喧嘩ふっかけて刃物沙汰なんざ、珍しくもねぇ」

なるほど。
だから今まで、辰巳を狙う輩が倒されても、特に話題にもならなかったのか。
ということは、今回は今までとは一味違う刺客ということか。

「今回は死んだから、こんな騒ぎになったってことかい」

「そうだな。死に方も不気味だしな」

できれば死体を調べたいが、この人混みでは、そんなことは不可能だろう。

与一は野次馬たちを、ざっと見渡した。
向こう側の人だかりの中を見た途端、視線が一人の男に吸い寄せられる。

向かい側の人の輪の、少し後ろから現場を見ている、袴姿の長身の男。
顔の上半分は、編み笠を深く被っているのでわからないが、周りの野次馬たちとは明らかに、醸し出す雰囲気が違っている。
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