RUN&GUN
「親父、漬け物があったら、さらに喜ぶぜ」

冷めた目で冷酒をあおりつつ、与一が言うと、屋台の親父はいそいそと調理台の下を探り出した。

「きゅうりと茄子しかないがね。いいかい?」

「きゅうりがいいわ」

嬉しそうに言う藍に、目尻が下がりっぱなしの親父は、気前よくきゅうりの漬け物を二本切って出してくれた。

「美味しい~っ。幸せだわ~~」

「安上がりですねぇ」

あっという間に冷酒を一合飲み干した与一は、心底呆れたように、自分の稲荷を口に入れた。

「お嬢さん、狐なんじゃないですか」

狐は、稲荷はともかく、きゅうりなんてもの食べたかなぁと思いながら呟いた与一に、藍は、ふふっと笑って、指についた米粒を、ぺろりと舐めた。
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