RUN&GUN
築地塀の前に立ち、店を窺っていた藍が、不意に、はっとしたように顔を上げた。

次の瞬間、藍の上に伸びた松の木から、勢い良く一人の男が落ちてきた。
与一が、素早く藍を抱えて横に飛ぶ。

落ちてきた男は、額をぱっくり割って、気絶していた。

「辰巳がやったんですかね」

仰向けに倒れているので、落ちたときの怪我ではない。
気絶したのは、今地面で頭を打ったからかも知れないが。

藍は、男をじっと見た後、ぽんぽんと倒れた身体を調べ始めた。
懐に当てた手が止まり、するりと中に入る。

引きずり出したのは、匕首だ。
手を開かすと、右手には寸鉄が握られていた。

「大層な装備のわりには、雑魚ですかね」

男の着物の裾をめくった与一が、脛に仕込まれた小さな苦無(くない)と、鉄板製の草履に、呆れた声で言う。

そのとき、いきなり背後に気配を感じた。
< 130 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop