RUN&GUN
「意気地なしねぇ~」

言って飛び上がり、与一の頭をぽかっと叩くと、藍は与一の身体に視線を落とした。

「よいっちゃん、傷はどう? 今はそんなに酷い傷じゃないけど、熱持ったりするかもしれないから、無理しちゃ駄目よ」

与一は脇腹に巻かれた布に、そっと手を当てた。

今朝起きてから、また藍は有無を言わさず与一の小袖を剥ぎ、もう一度傷口を洗って、調合した薬を塗りつけた。

藍は薬の調合や、傷の縫合などの簡単な手術も、自分でこなす。
いついかなるときに大怪我を負うかわからないこの稼業では、できるだけ何でも自分でやったほうが、都合が良いのだ。
与一も、薬の調合はできないが、傷の応急処置ぐらいならできる。

「大丈夫です。お嬢さんの血止め薬は、良く効きますし」

「だからって、あんまり動いたら、傷が広がっちゃうかもしれないでしょ。とにかく、無理は駄目よっ」

目の前で伸び上がって言う藍に、与一は苦笑いを返した。
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