RUN&GUN
「おお! もう来てくれたのかい」

与一が下駄屋に入るなり、辰巳が声をかけてきた。

---やり易いのかやり難いのか、わからねぇな---

心の中で思いながら、与一は辰巳に近づいた。

辰巳の頬に貼られた布に目をやる。
昨日はなかった。

「おや、どうしたんだい。男前が、台無しじゃないか」

軽く言いながら、与一が顎で頬を指す。

「ああ、これか。いやぁ、昨日、店も終わりってときに、客に絡まれてよ」

「ふぅん。酔客かい。災難だったな」

あまり興味ない風を装い、与一は当たり障りのないことを言った。

辰巳の作業台の前に座り、店内を見渡す。
今は特に、辺りに気になる感じはない。
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