RUN&GUN
「まぁ、自分で言うのもなんだが、才能があったんだろうな。普通、職人てのぁ一人の師についてずっと学ぶもんなんだが、俺っちは、どーもそういうのが苦手でな。いろんな師の下を渡り歩いたわけよ」

一人の師の下に居着けなかったのは、多分に辰巳の性癖に原因があるのだろうということは、容易に想像できた。

「ま、俺っちからしたら、いろんな師についてきた分、いろんな技術をつけられたから、良かったと思ってるんだがね」

言いながら、辰巳は作業台の下から、荒く削った下駄の台(下駄の足を乗せる部分)となるものを取り出した。

「ちょいと足に合わせてみてくれ」

作業台の上に置かれた台に、与一はひょいと足を乗せた。
与一の足の裏の形に、ぴたりと添う。
< 145 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop