RUN&GUN
---辰巳を調べる、絶好の機会だ---

与一はしばらく渋い顔で考えていたが、そう己に言い聞かせ、履いていた下駄を脱いで、奥の座敷に上がった。

部屋に入った与一は、内部の隅々にまで素早く視線を巡らした。
恐れていたような、いきなり布団が敷いてあるようなことはない。

---ま、皆が皆、初めからそれ目的で座敷に上がるわけではないもんな---

少し安心して、与一は適当に腰を下ろした。
相変わらず左手は懐の中だ。

辰巳は箪笥の中から、先程与一が選んだのと同じ柄の鼻緒を、いくつか取り出した。

「さ、ちょいと足を貸しておくれ」

そう言って辰巳は、胡座をかいた与一の片足を掴むと、自分のほうへ引き寄せた。
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