RUN&GUN
「~~~っ」

引っ張られたのが右足だったため、傷のある右脇腹に、再び激痛が走る。
与一は密かに、歯を食いしばった。

---やべぇな---

左手の濡れた感触は、初めより酷くなっている。
完全に傷が開いた上に、新たに広がったのかもしれない。

与一は傷の痛みから気を逸らすべく、目の前で自分の足を抱え込んでいる辰巳に目をやった。

背中を丸めて与一の足に台や鼻緒を合わせたりしている辰巳の、懐を凝視する。
首筋から胸、腹の上まで、ここぞとばかりに見えるところすべてに視線を這わす。

が、やはり御珠らしきものは見あたらない。

---どういうものかも、わからねぇんだもんなぁ---

うんざりしながら、一旦視線を切り、天井を見上げる。
そのまま視線を滑らせて、室内をじっくりと観察した。
が、簡単に見つかるようなところには、置いてないだろう。
与一も部屋を見渡しただけで見つかるとは思っていない。
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