RUN&GUN
与一の目が、入ってきた反対側の障子に向いた。
障子の向こうは、裏の通りに面した庭になっているはずだ。

「なぁ、辰巳さん。障子を開けてみてもいいかい?」

唐突な与一の言葉に、辰巳が怪訝な顔をする。
が、与一が額の汗を拭ってみせると、ああ、と納得したように呟いて、自ら腰を上げた。

「そうだな。こっちを開けないと、風が通らねぇもんな」

実際は、与一の額に浮いていた汗は、傷による貧血の冷や汗だが、辰巳がそこまで知るはずもない。

辰巳は障子を開け放った。
思った通り、眼前に庭が広がる。
与一はゆっくりと立ち上がり、障子に近づくと、庭の構造を頭に叩き込んだ。

「なかなか立派な庭だねぇ。開けておいたほうが、風情があって、いいんじゃないかい?」

与一が庭を見渡しながら言うと、辰巳は少し笑った。
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