RUN&GUN
それに何より、地味な諜報活動のわりに、なかなか核心に近づけない上に、お互い妙な色事に関わらなければならないので、精神的にも疲れる。

藍はさらに、向こうが与一に怪我を負わせたという怒りがある。
同じぐらい、諜報活動中に自分が不快な思いをしたという怒りもあるが。

「つけてきてるのは、例の奴らですかね」

「多分。同じ組織かどうかはわからないけど、これで違うようなら、御珠を狙うのは一つの組織じゃないってことがわかるし。どっちにしろ、もうこんな地味な仕事は、こりごりよ。あたしにこんな仕事をさせたことを、とくと後悔させてやるわ」

仕事をさせてるのは、依頼人なんですが、と思いながら、与一は手頃な木陰に風呂敷包みを置いた。

「さて」

ゆっくりと振り返る。
強い西日に照らされた林の入り口に、見覚えのある編み笠。

「重ね重ね、野暮なお人だねぇ。お前さんも陰間なら、逢い引きの邪魔するような真似は、よしとくれ」

戯れを言いながら、与一は軽く手を振って、藍を離す。
< 223 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop