RUN&GUN
与一はいきなり身を沈めると、地を蹴って相手の懐に飛び込んだ。

「その手には乗るかぁっ!」

男が叫び、素早く組んだ両手を、与一の頭に振り下ろす。
与一は咄嗟に、さらに深く身を沈め、反動を利用して左足を男の顔目掛けて真上に蹴り上げた。

「くっ」

男が慌てて横向きに倒れ込みながら避ける。
与一の足が、男の編み笠を飛ばした。

「ったく、どうせ笠飛ばされんだから、そんなもん初めっから被ってんなよ」

頬の血を親指で乱暴に拭い、与一は吐き捨てるように言った。
男は憎々しげに与一を睨み、ゆらりと立ち上がる。
曝された顔は、確かに一昨日の夜、与一の脇腹を裂いた陰間だ。

「あのとき、確かに苦無で突いたはずなのに・・・・・・」

「ふん。残念だったな。俺ぁ、そんなにヤワじゃねぇんだよ」

実際は結構な傷を負ったのだが、与一は鼻で笑った。
見ると、男の喉には痣が広がっている。
一昨日与一につけられた傷だ。
先程もそこを狙ったのだが、さすがに同じ手を許すほどの相手ではなかった。
< 225 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop