RUN&GUN
---二発目を喰らえば、完全に喉笛は潰れんのに---

もっとも、だからこそ二発目など入れささないよう、警戒するのだが。
やはり簡単に倒せる相手ではないようだ。

そのとき、背後の空気が変わった。

「うにゃっ?」

妙な悲鳴(?)に振り向くと、藍が己の首に手を当てて、爪先立ちになっている。
目を凝らすと、藍の首には細い糸が巻き付き、それが頭上の木の中に消えている。

「ははは。あのような小娘を連れているのが間違いよ。盾に取られるのがおちだということぐらい、わからんのか」

男が、勝ち誇ったように笑う。
この状態で、与一の動きを封じようという魂胆のようだ。

事実、笠を被ったままではあるが、笠の下から覗く藍の口元は苦しそうに歪み、首に巻き付いた糸を掴む手も、爪先立ちの足元も、辛そうに震えている。
木から伸びている糸が、もう少し引っ張られれば、藍の身体はあっけなく地面から浮くだろう。

「・・・・・・あんなちびっこを盾に取らねぇと、喧嘩できねぇのか?そんなに俺が怖いのか」

与一は男に視線を戻し、冷静に言った。
男から見れば、無理をして冷静さを保っているように見えるだろうが、与一は心(しん)から冷静だ。

何故なら、藍の苦しげな表情も、辛そうに震える身体も、全て演技なのだから。
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