RUN&GUN
「うう・・・・・・。よ、よいっちゃぁん」

藍が、苦しげに助けを求める。
狙ってのこととは思えない、あまりに頼りない声に、男の口角が吊り上がる。

「くくく・・・・・・。わかっているだろうが、下手に動くと、小娘の足は宙に浮くぞ。さぁ、どうする?」

「こうする」

即答し、与一は一気に男との距離を詰め、身体を捻ると、回し蹴りの要領で、遠心力を乗せた左足を、男のこめかみに打ち込んだ。

「ぐぅっ・・・・・・」

「いてっ」

男の呻きと与一の呟きが重なる。
男は身体の均衡を崩したものの、踏み留まる。
こめかみに踵を打ち込まれたら、少なくとも立ってはいられないはずだ。
与一は頭を振った男のこめかみを睨んだ。

「鉢金・・・・・・」

男の頭に巻かれたものに目を留め、与一は呟いた。
鉢巻きのように巻かれた布の下には、鉢金が仕込んであるに違いない。
先程打ち込んだ踵に痛みが走ったのは、そのせいだ。
ついでに脇腹にも、痛みが走ったが。
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