RUN&GUN

男が叫びながら、藍の足を掴んでいた手を離す。
が、藍は男の腕を掴んだままなので、折れた腕にぶら下がった。

激痛に目を見開く男が行動を起こす前に、藍は一瞬地に着いた足を蹴り上げ、折れた腕を引っ張って自分のほうへ引き寄せながら、男の肩口に蹴りを打ち込んだ。

ごきっという音と共に、男の腕がだらりと下がる。

「うげげ。骨を砕く音は、何度聞いても気色悪いわぁ」

身軽に降り立った藍が、顔をしかめて言うのと、銃声が響くのは、ほぼ同時だった。

藍が振り向くと、脇腹を押さえて片膝をついた与一が右手で構えるエンフィールドから、煙が上がっている。
銃口の先で、首に紐を巻き付けたままの男が、ばたりと倒れた。

「よいっちゃん！」

藍はその場で一回転し、そのまま遠心力たっぷりの踵を、自分の前で砕かれた肩を押さえて呻く男のこめかみに打ち込んだ。
男の黒目が反転し、地に頽れる。

「よいっちゃん、大丈夫？」

与一に駆け寄った藍は、脇腹を押さえている彼の手を見た。
幸い、血は見えない。
着物の下は、わからないが。