RUN&GUN
「藍さん。着物、忘れてます」

「忘れてないわよっ」

与一に着物を着せてもらいながら藍が膨れる。
小袖のまま笠を被ったくせに、と思いながら、与一は藍の帯を締めた。

「よいっちゃん。もう違和感なく動けるみたいだけど、大丈夫?」

くるんと藍が身体を反転させて、与一の腰に手を回し、笠の奥から見上げてくる。

「大丈夫ですよ。普通に動く分には、全く痛みもありません」

笠の紐を顎の下で結んでやりながら、与一は答えた。
藍は最後に敷き布団の下のエンフィールドを与一の懐に突っ込むと、一つため息をついて与一の手を引いた。

「普通なら、美味しいもの食べて、安静にしておくべきなのに。食材は忘れちゃうしさ~」

ぶつぶつと唇を尖らせる藍に、そういや腹減ったな、と思いつつ、与一は廊下に出る。
部屋を出た途端、藍が与一の腕にべったりと引っ付き、小さい声で言った。

「よいっちゃんは、どうする?」
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