RUN&GUN
「あたしは追いはぎに襲われた女子(おなご)で、路頭に迷っていたところを、たまたま早くに目覚めたあなたが見つけてくれて、助けてくれたってこと」

「・・・・・・何故わたくしだけが、あなたに気づくことができたんです?」

簡単な藍の説明に、お蓉は異議を唱える。

「たまたまあなたの部屋の裏で、あたしが襲われて、物音に気づいたのが、あなただけだったとか。たまたま厠に立ったときに気づいた、とか」

その辺は適当に考えなさいよ、と言わんばかりに、藍も適当に理由付けた。

「そうだとしても、うちの前のすぐ近くでそういう目に遭った人を助けたのに、わたくしがしばらく外にいるのは、おかしいのではないですか?」

重ねて問うお蓉に、面倒くさそうに藍は腰に手を当てて立ち止まった。

「あのねぇ。あたしはあなたのために、どうでもいい役を引き受けてんの。ちょっとは自分で考えなさいよ」

初めて正面から見る藍に、お蓉は息を呑んだ。
髪は乱れ、顔も汚れているが、見たこともないほどの美貌に、幼い見た目には似つかわしくない、強い瞳。
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