RUN&GUN
しばらくそのままお蓉を睨んでいた藍は、不意に視線を上げると、笠を引き下げた。

「いけないいけない。よいっちゃんに怒られちゃうわ」

笠を目深に被り直し、くるりと前を向いて歩き出す藍に続きながら、お蓉はしみじみと言った。

「あなたと、あの与一さんは、本当に仲がよろしいのね」

藍はちらりと振り返り、お蓉を見た。
お蓉は少し愁いを帯びた表情で、藍を眺めている。

「わたくしも、あなたのように素直に振る舞えたらいいのに」

「あら。さっきまでは、あたしのこと、まるで売女を見るような目で見ていたくせに」

お蓉は少し困ったような顔をし、顔を伏せた。

「だって、あんな宿で殿方といることも、人目も憚らず与一さんにくっついていく態度も、わたくしには信じられないことですもの」

傲慢にも聞こえる言葉だが、藍は気を悪くした風もなく、ふん、と鼻を鳴らす。

「ま、大店のお嬢様には、確かに目の毒だったでしょうねぇ」

「あなたはてっきり、そういうお仕事のかたなんだと思いましたわ」

続けて言うお蓉に、今度は藍は噛み付いた。

「失礼ねっ! あたしがあんなことするのは、よいっちゃんにだけよっ!」
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