RUN&GUN
「でもさ、お福さんは確か、お蓉さんより年若なのでしょ? そんな若い身空で、老人に片足突っ込んだ旦那に輿入れして、相手にされないって、それはそれで良かったんじゃないの? そんな若い娘に手を出すような色ぼけじじぃの相手なんて、あたしだったら嫌だけどなぁ。まさか本気で旦那さんに惚れてるわけでもないんでしょ?」

藍の下世話な物言いに、お蓉はしばらく呆気に取られていたが、ぷっと吹き出すと、握っていた拳を開いた。

「そうですねぇ・・・・・・。言われてみれば、そうかもしれません。でも、お福さんはお姫様なだけに自尊心の強いおかたですから。たとえ望んで輿入れしたわけでなくても、自分を相手にしないなんて、許せないのじゃないかしら。まして、その理由が衆道者だからなんて。世間の噂もありましょう」

「へぇ。面倒くさいのねぇ。好きでないなら、相手にされないのはこれ幸い、とはいかないのね」

藍の言い方がよほど珍しいのか、お蓉は笑い続ける。

「ねぇ。お福さんは御珠の存在を、どう知ったのかしら? 元々お福さんに贈られたものだったの?」

お蓉は笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭いながら、軽く首を振った。

「いいえ。そりゃ御珠があそこに下されたのは、お福さんがいてこそのことですけど、お福さんは旦那さんに輿入れした身、旦那さんが上なので、旦那さん宛に贈られたものですよ」
< 277 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop