RUN&GUN
「あなたと与一さんは、どこで知り合ったんですの?」

年頃の娘らしい好奇心で、お蓉は藍に興味を持った。
色恋話は女子(おなご)の娯楽だ。
が、藍はそのようなものに興味はない。

「どこだったかしら。色町の往来よぅ。ほら、よいっちゃんは色男だから、目を惹いたのね~」

藍は真実を言ったにすぎないのだが、この言い方では、まるで与一が遊び人のようだ。

「まぁ。与一さんは、そんな色町に通うようなお人なのですか」

案の定、お蓉は軽蔑の色を宿した目で、藍に詰め寄る。

「そのようなお人、やめておいたほうが、よろしいのでは? あなた、騙されているのじゃなくて?」

「何言ってるのよぅ。よいっちゃん、そんな人じゃないわよ。色町っても、ただの往来だし、佇んでるよいっちゃんに目を付けたのは、あたしなんだから」

「色町に佇むだなんて! 女郎を物色しているんですよ」

藍の言っているのは、若干五歳の与一であり、お蓉の言うのは今の与一だ。
話が合わないのは当然なのだが、藍もわざわざ自分たちのことを教えてやる気はないので、平行線のままだ。
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