RUN&GUN
「おいおい。そんなことで、大丈夫なのか? いくら凄腕とはいえ、危険の伴う仕事には、変わりないだろ。そんなに私情を挟んでたら、仕事に差し障りが出るんじゃないのか?」

確かに、必要以上に仲間を思いやれば、仕事の効率が下がるのが、この稼業だ。
仕事をする上で、仲間が瀕死の重傷を負った場合、打ち棄てることもある世界なのだ。

特に、藍が重傷を負った場合は、与一は藍を運ぶことに、そう苦労することはないが、今のように与一のほうが動けなくなった場合、藍の足まで止めてしまう。
仕事中には、あってはならないことだ。

「・・・・・・だって、今までこんな酷い傷、受けたことないもの」

そういえばあたしも、脇腹が痛いかも、と思いながら、藍は風弥を睨んだ。

「あなたこそ、今回の依頼では、失うものばっかりで、得るものは何もなかったじゃない。とんだ無駄足だったわね」

竜胆丸は死んだし、以前に林でやりあった男も死んだ。
初めに辰巳を襲った土左衛門も風弥の仲間なら、三人。
はっきりわかっているだけでも、これだけの仲間を失ったことになる。

だが風弥は、軽く口角を上げた。

「そうでもないぜ。むしろ、俺は今回の依頼に、感謝したいぐらいだ。お前さんも、その男も、竜胆丸の存在を補って余りあるぜ」

お気に入りだったはずの竜胆丸も、風弥にとっては、さほど執着のない人間だったということか。

こういう稼業は、風弥のような人間のほうが相応しいんだろうな、と思いつつ、つい最近までは、自分もそうだったと気づく。
むしろ、やけに与一に執着している自分に、はっきり気づいたのは、本当にさっき、交戦中に風弥に指摘されたときだ。
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