RUN&GUN
---だってあたしには、よいっちゃんしか、いないんだから!---

無理矢理自分を納得させ、藍は再び、じろりと風弥を睨んだ。

「それは、ありがとう。でも、よいっちゃんはあたしのだし、あたしはあなたのものになんか、ならないわよ」

べぇっと舌を出し、藍は与一の身体の下に腕を突っ込み、ふんぬっと力を入れた。
やはり持ち上げることができないと悟ると、与一の右脇腹に負担にならないよう、左腕を自分の肩に回して、思い切り足を踏ん張った。

ようやくよろよろと立ち上がれたが、思い切り前屈みにならないと、耐えられない。

「そんな格好で帰る気か? 全く、どんだけ意地っ張りなんだか。ここまで運んだのは俺なんだから、素直に俺に頼めばいいじゃないか」

言いながら伸ばす風弥の手を、藍は慌てて遮った。

「ち、違うわよ。あたしだって、できれば運んで欲しいけど、住処を知られるわけにはいかない。あなただって、本拠地は秘密でしょ」

変に避けたせいで、藍が大きくよろける。
風弥は与一ごと藍を抱き留めると、そのまま二人を支えつつ、少し考え込んだ。

「それはそうだが。けどなぁ・・・・・・。どっちにしろ、こんなふらふらな状態じゃ、家までといわず、この土手も上がれないぜ」

すでに崩れ落ちそうなほど、藍の膝は震えている。
風弥の言うとおり、土手までどころか、あと二、三歩歩けば、へたり込みそうだ。
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