RUN&GUN
「お主は、東の追っ手から守ってくれたしの。礼がてら、送ってやるか」

たまが、きょろきょろとその辺りを見回し、辰巳に何枚か落ち葉を探してくれるよう頼んだ。
辰巳が落ち葉を探している間、たまは、しきりに前足を舐める。

「こんなもんでいいか?」

河原なのであまりないが、とりあえず辰巳が片手に乗せた落ち葉を持ってきた。
たまは、おもむろに藍たちを振り返ると、ちょいちょいと地面を示した。

「ほれ、そこに座れ」

言うまでもなく、その場にぺたんと座り込んだ藍は、倒れ込む与一の身体を抱きしめた。

後ろ足で立ち上がり、二人に歩み寄ったたまは、前足で抱えていた落ち葉を、えいっとばかりに二人目掛けて振りまいた。
投げられただけの落ち葉は、地に落ちることなく、ひらひらと藍と与一の周りを回り始める。

全員がぽかんとしている中で、たまが「にゃうっ!」と気合いを入れると、いきなり周りをゆっくり回っていた落ち葉が、物凄い勢いで回り出し、竜巻のようなものが起こったかと思うと、一瞬で霧散した。

一瞬の強風が去った後は、少しの血の跡があるだけで、動けないはずの与一の姿も、藍の姿もその場にはなかった。
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