RUN&GUN
「・・・・・・ち。折角極上の宝を見つけたってのに。まぁ、それを探し続けるのも、また一興ってか」

さして悔やむでもなく、風弥は軽く言うと、よっこらせ、と立ち上がった。

「ではわらわたちも、帰るとするかの。今日中には、皆戻ってくるじゃろ。あとはわらわを、お福に渡してくれればよい。わらわはお福と、北御所に帰るからの」

「また、あそこに戻るのかぁ」

ため息をついて、たまを抱き上げる辰巳を、土手の上から風弥が見下ろした。

「ま、しょっ引かれたすぐ後だし、当分は自粛するだろうさ。旦那が気の小さい奴なら、今後そういうことは、なくなるかもしれねぇしな」

言い置いて、風弥は踵を返し、足早に立ち去った。
辰巳はしばらくぼんやりと、風弥の消えた後を眺めていたが、腕の中のたまが、にゃ、と鳴いたのをきっかけに、自身も土手を上りだした。

「俺は、奴らが狙ってるのが、猫のたまで良かった。今手元にあるのが、ただの珠だったら、それこそ俺は、泥棒の濡れ衣を着せられかねない。猫のたまだったら、皆しょっ引かれた現場にいなかったとしても、逃げた猫を探していたと言えば、さほど怪しまれない。たまは、大事な預かり物なのだし」

言いながら、たまを撫でる辰巳に、たまは甘えるように、喉を鳴らした。
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