RUN&GUN
ほんの僅かな戸までの距離を、永遠とも思える時間をかけて進んだ藍は、家に入ると、台所の奥にある、ほとんど物置になっている小さな部屋に、与一と共に倒れ込んだ。

「・・・・・・~~っ」

言葉も出ないほど疲れ切った藍は、しばらく与一と転がったまま、荒い息をついていた。
一応藍が下になっているため、倒れ込んだ拍子に、与一に新たな傷がつくことはないはずだ。
ついたとしても、どこかをぶつけてつく、痣ぐらいだろう。

重い、と思いながらも、与一の身体を三分の一ほど乗せたまま、藍は息が整うまで、そのままの姿勢で倒れていた。

ややあってから、もぞもぞと起き上がり、引き戸の鍵をかけると、藍は与一の帯を解いた。
それから、与一の身体を転がして仰向けにすると、遠慮無く着物を脱がしにかかる。

下着の小袖は、白い部分より赤く染まった部分のほうが多い。
眉を顰めながら小袖を脱がすと、まず一番心配な、脇腹の傷を確かめた。
少しだけ傷が開いたようだが、幸い縫った糸ごと広がるような、酷い傷にはなっていない。

ほっと息をつき、藍は与一の身体中に、無数についた傷を一つ一つ確かめ、深い傷がないかを調べていった。
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