スノードロップ
気がつくと辺りは
暗くなっていて
いつの間にか人通りも
少なくなっていた


いつまでもここに
いられない…

帰らなきゃ…


私は隣に座っている
周へ視線を向ける


周は無言で私の頬に
手をあて乾ききった
涙の跡を拭ってくれる


「帰んぞっ」

「………うん」



どうしてこんなに
優しいんだろう…―

私が知ってる
出会った時の
周と何も変わらない…


この人を………


好きになって良かった―


叶わなくてもいい…

何度涙を流しても
構わない


今はただ…目の前に
いる周と
真っ直ぐに向き合って
いたい―…







暗くなった夜道を
周と並んで歩く

言葉はなくただ二人の
足音だけが
辺りに響いていく



もうすぐ私の家だ…


別れる前にちゃんと
謝りたかったことは
伝えなきゃ…


「まこ…」「オレさー」

二人の声が重なる


「あっごめん、なに?」

少し苦笑いで周が言う


「あっ…今日…私周に
謝りたくて…」


「オレに?なんで?」


「なっなんか今朝から
私の態度そっけな
かったかなぁーって
思って…」


「あー…まぁ、たしかに」

横目で私を見ながら
言う周


「それでなんか悪かった
かなぁ…って思ったから
帰りに謝ろうって思って
誘ったの…ごめんね」


「それだけ?」


「えっ!?うん…。話しって
いう話しじゃ
なかったけど…」


「はぁ――――…」

いきなり大きな
ため息をこぼす周


「なっなによ、その
ため息はっ」


「ため息の理由聞かれても
困んだけど…」



そっそうか……


「でっで?何だったの?
周の言いかけたこと」

私から話しを切り替える


「別に。なんもない」


「ウソー!"オレさー"って
言ってたじゃん。
何かあるなら言ってよ」


すると周は歩いていた
足を止めた


「なっなに?どうしたの?」


「ここ下りたら家だろ?
じゃ、また明日っ!!」

「ちょっちょっと~!」

周は軽く手だけ振って
自分の家に向かって
真っ直ぐ歩き始めた

何…言いたかったん
だろう―…



まぁいいや…とりあえず
謝れたし明日からは
普段通りに接していこう


そう心に決め私は家へと
下る坂を下りて行った

その時私の背中に
向かって周が叫んだ
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