スノードロップ
「オレさーー」

私は足を止めて
振り返る


「オレ、舞とはなんも
ねーからっ!」



―…周…


「だから一人で帰んの
寂しいんだったら
いつでも誘えよっ!」

「さっ寂しくなんか
ないよっ!バカ!!」

「ハハッ意地張ってんじゃ
ねーよっ!じゃーなっ!」


「気をつけてねっ!」

そう言い私は大きく
手を振った


周の姿が遠くなって
見えなくなるまで
私はその場に
立ち尽くしていた



空を見上げると
うっすらとかかった
雲の隙間から
月が覗いている





もうすぐ梅雨が
明ける


湿気がかった
風も収まり



暖かい空気とともに
虫の音が響き渡る―



季節は夏を迎えようと
していた―


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