反芻
彼の妻はそれを知っていた。

性的に欲望に基づいて求められることがなかったとしても、彼女は彼女なりに彼の存在を母親のように慈しんでいたのだから。

僕にはそれが口惜しくもあった。

どれだけ性的な関係を持とうとも、彼女の抱く愛には叶わないような気がしたからだ。

どれだけ抱かれても、僕は「女」にはなれない。

< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop