片思いlovers
その後は何もなく、また話すことはなかった。



放課後、結衣と教室にいた。

「で、さっきの話!どーなのよ?」
唐突にきかれても、何と答えたら良いのか分からない。

もし今ここで自分の気持ちを明らかにしたとしたら、結衣はきっと協力してくれる。
だけど、そのことで田原に嫌な想いをさせるのは自分が傷つくことよりも嫌なのだ。

なにも言えずにいる私をみて、結衣は静かにため息をついた。

「まぁいいよ。でも言ってね?協力するから」
なんだかんだ言って応援してくれているんだと思う。
そんな友達に恵まれたことを心から嬉しく思った。

結局、言えずじまいだった。
結衣には悪いけど、まだ言えない。

校門をでる時に今日は寝てないから、田原と会うこともないだろう。
そんなことを考えながら歩いていた。

グラウンドではサッカー部の練習が終わったようだ。
・・・会ってしまうかも!

逃げるように歩調を速める私の背に田原の声が飛んできた。

げ!
逃げたい・・・

だけどその気持ちと同じくらい、声をかけてくれたことに対する喜びもあった。




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