ギャングエイジ
美波の話を聞くうえでしてはいけないことはいくつかある。絶対に喋らないこと、だ。前に女子会で美波の会話を遮った3組の荻田さんは女子会に呼ばれなくなったことがある。咳をした水越さんも最近は見かけない。彼女は女王様なのだ。彼女に話しかけてもいいとすれば王様である柊斗君だけだ。それも明日からはないだろう。美波と柚月の座る場所を見ながら彼女は考えていた。いきなり出てきてお前は誰だだって?私はあえて言うなら都合のいい目撃者Aってとこかな。あっ茶々いれないで。美波が何か話してる。

「私、柊斗に飽きられた、のかな?」
唐突だった。そのせいで柚月は初歩的なミスを犯した。喋ってしまったのだ。
「そんなことないよ。きっと何かの間違いだよ。写真の写りもはっきりしてないじゃん。」
柚月の顔がしまったと言っているのを都合のいい目撃者Aは見逃さなかった。
「柚月の言う通りだったらどんなに嬉しいか…でもあれは柊斗だよ。見間違えたりしないよ。」
これはAにも柚月にも驚きであり、新鮮だった。美波が王様以外の言葉を聞いた。王様が自分のもとを離れどこかへ行こうとしているからなのか、窓口係の柚月の言葉を聞いたのだ。
美波の声は落ち着き払っていたが悲しみが伝わってきた。『恋は人を変えるのよ。』美波が言っていたことを突然柚月は思い出した。
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