妖艶な月光と甘美なる熱い蜜
「―――…何者だ」
その声に、神経がぴりぴりと震えた。
ぴくぴくと痙攣する、愚かなあたしの体。
露骨にびくん!と反応する。
う、うそ。
そんな、そんなことって。
瞳が、心が、捕らえられた――。
甘美な香りが花開くように傍まで広がっていく。
鼻腔を擽る、甘い甘い香り。
しいて言うのなら、淡い高色の紅。
紅の、美しい薔薇。
透す月光の反射で、その姿は妖艶に照らされた。
人ならざるものが、そこにはいた。