妖艶な月光と甘美なる熱い蜜


「―――…何者だ」

その声に、神経がぴりぴりと震えた。

ぴくぴくと痙攣する、愚かなあたしの体。

露骨にびくん!と反応する。


う、うそ。

そんな、そんなことって。


瞳が、心が、捕らえられた――。

甘美な香りが花開くように傍まで広がっていく。

鼻腔を擽る、甘い甘い香り。


しいて言うのなら、淡い高色の紅。

紅の、美しい薔薇。


透す月光の反射で、その姿は妖艶に照らされた。


人ならざるものが、そこにはいた。
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop