妖艶な月光と甘美なる熱い蜜


待って、落ち着け、あたし。


ちょ、おかしいってこんなの。


「何者かと、聞いている」

また幾重にも体に音をひしめいて響く、声音。


駆け巡る、不確かな鼓動。

駈け上がる、自身の息吹。

もう逃れられない鎖が、きつく身体に巻き付いた。


魔法でもかかっているの?


「ま、真空…人間」

そう呟くしか、できなかった。

円型の月は、沈黙してその光景を覗いている。
< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop