出会い・白輝伝
それでも一太の二親は、
この無残に変わり行く
土地を見捨てられず
社近くに住み着き
一太と二太を生み
育てていたが、父親は
一太が五回目・二太が
二回目の冬を越えた夏。
人気の無くなった深夜
に獣姿で食べ物を探しに
出掛け、国道でトラック
に跳ね飛ばされ死んだ。
母親も今年の春。
妹を産み落とした後、
残して逝く子供達を
気遣いながら
父親の後を追った。
一太達三人が、
松ガ原町最後の狐族に
なってしまった。
幼い命を守るべき二親に
先立たれた一太達が、
人や妖獣に見つからず
生き残れたのは、
稲荷神社の側に立って
いる樹齢一五〇年余りの
老楓に宿る精霊に守ら
れて来たからだった。
風に乗って聞こえて
来る亡き母を
思い泣く幼子の声。
子供達が隠れ住んで
居たアパートの縁の
下に幻影を送り
自らの虚に招き入れ、
生きる術を教えて
くれたのは楓の精霊
だった。老木が若木
より生き続けた
稲荷神社の土地。
安全と思われた住処に
人の姿がよく現れる
ようになったのが、
早春この場所が新設
バイパス道路計画地に
指定され工事が、
始まってからだった。
この無残に変わり行く
土地を見捨てられず
社近くに住み着き
一太と二太を生み
育てていたが、父親は
一太が五回目・二太が
二回目の冬を越えた夏。
人気の無くなった深夜
に獣姿で食べ物を探しに
出掛け、国道でトラック
に跳ね飛ばされ死んだ。
母親も今年の春。
妹を産み落とした後、
残して逝く子供達を
気遣いながら
父親の後を追った。
一太達三人が、
松ガ原町最後の狐族に
なってしまった。
幼い命を守るべき二親に
先立たれた一太達が、
人や妖獣に見つからず
生き残れたのは、
稲荷神社の側に立って
いる樹齢一五〇年余りの
老楓に宿る精霊に守ら
れて来たからだった。
風に乗って聞こえて
来る亡き母を
思い泣く幼子の声。
子供達が隠れ住んで
居たアパートの縁の
下に幻影を送り
自らの虚に招き入れ、
生きる術を教えて
くれたのは楓の精霊
だった。老木が若木
より生き続けた
稲荷神社の土地。
安全と思われた住処に
人の姿がよく現れる
ようになったのが、
早春この場所が新設
バイパス道路計画地に
指定され工事が、
始まってからだった。