出会い・白輝伝
「とっくに逃げたさ」
「なんとか自然保護
団体が、役場に掛け
合い鳥や動物は
自然公園に移動
させたそうだ」

「残念」

「なんだお前タヌキ
鍋でも食いたいのか」

「えっ~タヌキって
食えるんすか」

松っあんが、ガキの頃
食べたと応えてくれた。

「じゃ…キツネは」

「キツネは稲荷さま
のお使いだ。馬鹿にする
と罰があたるぞ。とよく
婆っさまが言てたなあ。
しかしこれじゃなあ」

屋根が崩れ傾いた社を
見て現場監督が
溜め息を付いた。

「御利益なさそうすね」

虚の側に寄り掛かって
いた青年がちゃちゃを
入れ頭を小突かれた。

会話が弾む外の話し
声に紛れ虚の中では、
二太が一太にそっと聞く

「にいちゃ、ぼくたち
食べられちゃう」

「大丈夫見つからないよ」

「アレ~変だなあ」

「何をやっているんだよ」

再び虚を覗き込む青年の
後ろから現場監督が、
一緒に中を覗く。

「いまこの中から子供の
声が聞こえたみたいで」
「枯れ葉しかないじゃ
ないか。寝ぼけるには、
まだ早いぞ。さて
仕事仕事。んじゃ
次ぎへ行くぞ」
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