出会い・白輝伝
雑草だらけの空き地
を進むと。川原の喧噪
が遠のき雑木を吹き
抜ける風と草を踏む
音だけが聞こえる。

洸は結界が張られた
空き地の近くで立ち
止まり辺りを伺う。

左手に屋根が抜け
落ち壊れた小さな
社が見えるが、
そこからは何も
感じられない。

右手には太い楓の老木が
ひっそりと立っている。

洸は目を閉じ呼吸を
整え少し霊気を上げ
てみる。微かに子供
の笑い声が聞こえる
更に気を上げてみる。

「にいちゃ‥あははは」

今度ははっきり小さな
子供の楽しげに笑う声
と草を踏み分け走る
足音が聞こえる。

洸はゆっくりと目を
開けた。人を寄せ付け
ない為に張られた結界
だが、気を高めた洸
には効き目がなかった。

サイズの合わない
大きなTシャツに
半ズボンを来た三才位
の痩せた小さな男の子
が、ひとり頬を赤く
染め息を弾ませ草むら
を駆け回り跳びはね
何かを捕まえては、
楓の根元に座る
よく似た七才位の少年
に渡し口を開け待つ。

どうやらバッタを
捕まえては、足を
取ってもらい食べて
いるらしい。

「兄弟かな」

子供達に興味を引かれ
るが、何時も父より
言われる。

「必要ない限り妖魔
に関わらない事」

を思い出し立ち去ろう
とした。再び笑い声が
聞こえ洸は、くるりと
元にもどり独り言を
つぶやく。

「でも見ているだけ
ならいいよね」

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