出会い・白輝伝
ゆらり辺りの空間が
揺らぎ二人の姿が
視界から消えた。

結界を強く張り
直され再びそこには
誰も居なくなった。

「嫌われちゃったか。
驚かせてごめんね」

洸は立ち上がり大きな
溜め息を付きズボンに
付いたドロを落とした。
結界の向うにいる子供達
に謝り腕時計を見た。

「やばっい‥あと5分だ」

2時20分には川原に
集合・クラス別に
並び点呼を取る
事になっていた。

慌てて雑木林を全速力
で駆け抜け土手に向うが、
伸び放題の草が邪魔に
なり思うように
進まない焦る洸。

あと少しで草地を
抜けられる時計を見る
デジタルの文字が
20になる。

「うひゃ~やべえ~」

今年度担任の森川は
温厚な教師だが、時間と
あいさつには厳しい。

奉仕作業前の注意で
聞いた森川の言葉
を思い出す

『2時20分の集合に
間に合わない奴は、
置いて行くぞ』

森川は言った事は
必ず実行している。

「オレ~帰り道
~判らない~」

学校までの道順を覚え
ていない洸は更に
スピードを上げるが、
土手の舗装道路が見えて
来た所で草に足を取られ
転びそうになった。

「あぶない‥」

聞き慣れた声と共に
腕が差し出され洸は
転倒を免れた。

「間一髪だったな」

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