出会い・白輝伝
森川が洸の人並み
外れた霊力能力を
知ったのは去年の五月。

入学したての一年生
が担任に旧校舎裏の
草むらを掘らせて
欲しいと訴える姿を
幾度となく職員室で、
見かけ変わった生徒
と興味を引かれた
のが最初だった。

森川が転任する前より
月森第二中学校内では、
旧校舎に泣き歩く
少女の幽霊が出ると
噂され事実・目撃者も
続出した為に学校側
は幾度となく
お祓いもした。

しかし少女は消える
こと無くさ迷い続け
とうとう旧校舎は
閉鎖された。

幽霊の話をする洸を
担任はふざけた態度
と叱り相手にしな
かったが、森川は
幾度となく食い下がる
洸の真剣な態度に自分
が立ち会う事を条件に
学校側に許可を取った。

放課後旧校舎裏の
草むらをふたりで
掘り下げた処
小さな頭蓋骨が現れ
警察も加わる
大騒ぎとなった。

三年前少女は都内で
見知らぬ男にさらわれ
暴行の末‥人目に
付かないこの場所に
埋め捨てられて
いたのだった。

冷たい土の中から
出て家族の元へ帰り
たく少女は自分が
埋まる場所を指さし
示すが、誰ひとり
少女の声無き願いを
受け取れずに
月日が過ぎた。

その間警察では必死
の捜査を進めるが、
目撃者がなく捜査
は難航していた。

洸が少女の証言を
警察に伝え事件は、
犯人の突然逮捕と
いう結末を迎え
終わった。あの事件
が無ければ森川を
含む教師達は洸を
毛色の変わった
一生徒として評価し
終わっていただろう。

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