出会い・白輝伝
『この付近は昔から
鬼伝承が多く
お客さん達が、
工事している場所には
鬼を封じ込めてある
とじいさんからよく
聞かされましたよ』

敷地内の社下に鬼が眠る。
ただの言い伝えと思うが、
社跡を発見してからは何故
か薄ら寒さを感じていた。

「現代に蘇る鬼か‥
まさかね」

有らぬことを口走り男は、
ひとり苦笑しながら
プレハブの事務所へと戻る
男の背中に元気な声が響く。

「それでは、壷から
掘り出してください」

助監督の青年が元気よく
掛け声を上げる。
それを合図に止められて
いた作業機械が唸りを上げ
回り出し作業が再開された。


       転




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