出会い・白輝伝
新たに現れた獲物に
飛び掛かる妖魔。

移し身はするりと逃げ
遠くへと妖魔を誘う。

妖魔の興味が完全に
移し身に移動したことを
確信した白蛇は、その姿
を幼い少女に変えた。

「妾が虚の中より結界を
張りまする。老は外より、
まもなく洸が参ります。
それまでがんばってくだされ」

楓の外皮は妖魔の攻撃で
無残にもそぎ落とされ
辺りに飛び散らばっていた。

「子供達が助かればよい。
ワシは大丈夫じゃ、
急げ奴が戻って来るぞ」

移し身の術はあまり遠く
には掛けられず術の効果
が切れ妖魔が楓の方を
うかがっていた。

白蛇は急ぎ虚の中に
入り結界を張った。

「待たせたな、もう
大丈夫じゃ。すぐに
餌がやって来る。奴の
関心は痩せたお前たち
から洸に移る。後は
じっとここで、騒ぎが
収まるのを待てばよい」

「白蛇どうして、ちさいの」

泣き続けて腫れたまぶた
をしたニ太が聞いた。

「ここに入れないからの。
大きくもなれるぞよ」

虚の中は白蛇が入り少し
窮屈になったが、白蛇の
笑顔に安心した
ニ太は緊張を解く。

外から恐ろしい咆哮が
響き聞こえた。獲物の
気配を完全に見失い怒り
に震える妖魔が、辺り
の立ち木を打ち倒し
暴れ始めたのだ。
雨が降り始める音が
聞こえ始めた。
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